森の町内会応援団長 枝廣淳子の岩泉町訪問レポート

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岩泉町訪問レポート

■平成18年7月22日(土)〜23日(日)、森の町内会の6人のメンバーが岩泉町におじゃましました。私も応援団長としてご一緒しました(応援団って、高校の時の体育祭以来だなぁ〜。団長ははじめてです!)
森の町内会のプロジェクトのために、1回目の間伐をおこなった小本地区の山へ向かいました。山道を走っていると、マツやカラマツの林の下に畑ワサビが広がっていました。

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これは畑ワサビの栽培者が山の持ち主から場所を借り、自分たちで間伐をして明るさを確保して、畑サワビを栽培しているのだそうです。同町の畑ワサビの出荷量は日本一とのこと。このように、「重ねていくこと」――木材だけではなく、森林の持つほかの生産や機能をうまく組み合わせて森を利用することは、材価が低迷している現在のような時代には、特にすぐれたアプローチです。

森の町内会のために間伐をした1.8ヘクタールは、アカマツの林が中心です。3週間ほどかけて20〜25%程度の間伐をし、ワイヤーで引き上げて出材しました。

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「1年前に、このプロジェクトがなかったころ、すぐ隣の森林でも間伐をしたんですよ」と言われて目を向けると、間伐をして明るくなったアカマツ林に、間伐した木が転がっています。「間伐をしなくては森がだめになってしまうのですが、現在の価格では、間伐し、その材を運び出せば運び出すほど、運送費が赤字になるため、切っても捨てているのです」。"捨て切り間伐"という悲しい言葉で表さなくてはならない現状なのです。

「それでも、ただ捨て切りをしたのでは、枝があるために、木が地面から浮いてしまい、なかなか腐りません。そうすると、病虫害の原因となる心配があるので、捨て切りとはいっても、切ってから枝を払って、地面に伏せ、できるだけ早く土に返すような形で捨て切りをしました」。そういわれてみると、たしかに、木は地面に寝ています。乱雑な捨て切りでは林の地面を痛めてしまいます。お金にならなくても、森を大事に丁寧に作業されているようすが伝わってきました。

バイオマス燃料も同じですが、チップ材のように安くしか売れないものは、高価なもの(柱などとして売れる木材など)と一緒に切って、いっしょに運搬して山から出さないと、コスト構造的に無理があります。

ダイコンであれば、葉っぱは葉飯に、首のところはからみ餅に、中ほどはふろふき大根に、シッポや皮はキンピラにと、丸ごと使うでしょう? 同じように、1本の木も、バーク(樹皮)はペレットに、真ん中は木材として、背板は割り箸や折り箱、トロ箱の原料として、端材はチップに、おがくずは銭湯の燃料にと、丸ごとじょうずに使い切ることを考えられたら、と思います(そのように使われていた時代には、コスト計算が合っていたのです)。

岩泉の豊かな森を見ながら、森の町内会の「間伐に寄与する紙」を切り口に、「現代版・木や森を丸ごと活かす」方法はないのかなあ?と思ったのでした。企業や個人向けに「丸ごと1本」「丸ごと1山」を"料理"した宅配セットはできないかな?

翌日は、よいお天気のもと、同町の早坂高原での「カタクリ再生大作戦」の下草刈りに、町の方200人ほどに混ざって、久しぶりに鎌を手に、気持ちのよい汗を流しました。早坂高原の散策路は、林野庁が初認定した森林浴を国民のストレス解消や健康増進に役立てる「セラピーロード」に選ばれているほど、穏やかで豊かで静かで、しみじみと湧き上がってくるいのちの喜びを感じられる場所です。

ぜひ今度、ごいっしょしませんか? 紙の向こうに見える森の、そのまた向こうについて、思いを馳せ、語り合ってみませんか?(岩泉の地酒もおいしいんですよ〜。^^;)

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伊達町長と森の記念撮影